しかわ取り・雪さらし

12月に「カズはぎ」をして干しておいた楮の皮。
これを、寒気にあてて氷らせ、表面の黒皮を取り除いて雪の上に並べると、太陽の紫外線と雪の水分の働きで、濃い緑色をした楮の皮がきれいなクリーム色に漂白されます。
これが、「雪さらし」と呼ばれる作業です。

塩素などの薬品をいっさい使わないこの方法で、つやのある強い紙が生まれます。



1月、夜の寒気が深まった頃、干しておいた黒皮(表面 の茶色い皮)付きの楮の皮を、一晩水につけてもどし、雪の上に広げておきます。
夜はマイナス4~6度くらいになるので、翌朝には皮はバリバリに凍りつきます。

こうして凍らせると、黒皮が浮いてきて、はがしやすくなるのです。

 



凍った楮の皮を再び水につけて解かし、「おかき」という道具で表面 をこそげ取るようにして黒皮をとって行きます。
この作業は「しかわとり」とよばれています。
「節皮取り」がなまったものだとおもいますが・・・。
「しかわとり」をしてくれるのは、内山地区のおばちゃん二人。一日で約15キロ分をこなします。



よく凍みた楮の皮からは、黒皮(こっちのことばで「くそっかわ」)がおもしろいようにはがれていきます。

 



これが「おかき」。
桐の棒に、片刃のノコギリをうち向きに取り付けてゆるく研いだ手作りの道具です。 あまりよく切れない方が具合がいいようです。

 



「しかわとり」の終わった皮をよく洗い、1月中旬以降の、雪のよく積もって晴れた日に、雪の上に並べます。
なるべく重なり合わないように並べ、乾かないよう薄く雪をかけておきます。

 



去年までかんじきを履いて作業していましたが今年はおニューのスノーシューを履いています。
たいへん具合がいいです・・・。

 



雪の上に並べたばかりの皮は、こんな色をしています。
昆布みたい。

 



雪さらしをしている田んぼの上の段に、ウサギの足跡が付いてました。
天気がよいと本当に気持ちのいい作業です。

 



・・・でも、雪が降ってくると あわてて楮を片づける羽目になります。
油断してると一晩で並べた楮が70センチも雪の中に 埋もれてしまうこともあるので。雪さらしをしてる間は天気予報とくびっぴきになります。

 



すっかり色がクリーム色になったら、雪の上から引き上げます。
手前は雪さらしをしてない皮、奥がさらした皮です。
色を比べてみて下さいね。

簡単に科学的な説明をすると、太陽の紫外線と雪の水分の作用でオゾンが発生します。 オゾンには強い殺菌・漂白作用があるので楮が白くなる、ということらしいです。

 


雪さらしの終わった皮は、いよいよ釜で煮られて紙の原料へと姿を変えてゆきます。

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